国際総合学類

「国際人」の育成

今日の国際社会は希望とエネルギーに満ちている反面、深刻な問題も絶えず作り出しています。現在進行中の国際情勢を例にとると、世界中で猛威を振るっているコロナウィルス感染症は単に多くの人命を奪い、人々の健康を蝕む公衆衛生上の一大危機を惹起しただけでなく、各国の経済及び社会秩序の混乱、ひいては国家間の対立の激化を誘発しています。このような世界平和への新たな脅威が現出しつつあるなか、従来の紛争の多くも収束する気配をみせません。アフリカ大陸、中東ないし東南アジアの多くの国々で民族間の衝突やテロリズムが依然として蔓延しており、東アジアにおいても南シナ海から朝鮮半島までいたるところで紛争の火種がくすぶっています。政治や安全保障面と連動する形で経済分野においても重大な紛争事案が多発しており、とくに米国や中国など国際経済秩序の維持にイニシアチブをとるべきだった大国は通商政策をめぐって激突を繰り返しています。あらゆる分野においてこれらの国々と密接な関係を有する日本やEUなどもこうした対立から深刻な影響を受けていることは言うまでもありません。かくして、交通輸送や情報伝達の技術の向上は国境を超える人、モノ、そして金の移動を容易にさせる効果をもたらす反面、国際問題と国内問題の境界を曖昧にさせ、国際紛争をより複雑化させる一因になっています。この混沌とした国際情勢に直面しつつ、私たちはどのように対処したらよいのでしょうか。グローバル世界及びそれと表裏一体になっているローカルの社会や人間はどこへ向かうのでしょうか。貧困、差別、軍縮、自由貿易、規制緩和、情報の氾濫など、昨今の国際社会の諸問題を表すキーワードは無数にあり、しかも相互に複雑に絡み合っています。国際総合学類は、これらの言葉を含め様々に表現される現代的諸問題に対し、グローバル、ローカル双方の視点から深い洞察力と分析力を身につけ、豊かなコミュニケーション力を通して先見性と独自性に富む解決策を提示できる「国際人」の育成を目指しています。

国際総合学類での学び

国際総合学類は国際関係学と国際開発学の2つの主専攻があります。さらにその2つを横断する形で、国際政治・国際法、経済学、文化・社会開発、情報・環境という、文と理にまたがる4つの分野が存在しています。これら4分野の科目群を広く学び、その上で1つの専門分野を深く追究することになります。

(1)分析力

日々激動する国際情勢を読み解くには、確かな分析能力が必要です。国際総合学類はこの能力が身につくようなカリキュラムを用意しています。政治学の理論や政策決定のプロセス、経済動向、またはその背景にある文化等を学ぶことで世界の変化を定性的に理解できるようにすると同時に、統計学やデータ分析の授業で数値による定量的な分析能力が身につくように養成します。さらにフィールドワークの授業も設置されており、どう分析するのかを実践を通して学ぶことが可能です。

(2)コミュニケーション力

国際総合学類では3分の1近くの授業が英語で行われています。これは単純に英語を重視するというよりも、異なる文化背景による異なる言語上での他者とのコミュニケーション能力を培うためです。その中にはディスカッション中心のものや日本の伝統文化を英語で読み解く授業もあり、留学生・日本人学生双方がこの能力を育てられるように設置されています。また、国際総合学類が属する社会・国際学群には社会国際教育プログラムという全科目英語による留学生向けプログラムがあり、日本人学生も同プログラムの科目を履修することが可能です。

(3)統合能力

分析力、コミュニケーション力を培った上で最後はそれらを動員し、問題をより高い視点から一つの考察へまとめ上げることが大切です。国際総合学類には独立論文というユニークな制度があります。通常、すべての学生は3年次から専門ゼミに所属し研究を進めていくことになります。そして3年次末に独立論文を執筆し、専門分野に関する研究の中途段階における成果発表の機会としています。これは、個々の研究の土台作りであり、学生が長いスパンの中で一つの研究テーマを掘り下げ、研究により深みを持たせるためのものです。これらは4年次でさらに探求され体系化されて最終的には卒業論文(必修)としてまとめられます。様々な授業を通して培った総合的な力を専門性につなげる学びを、国際総合学類は推進します。

国際総合学類は独創性と洞察力を有し、国際社会及びそれと連動するローカル社会の繁栄と発展に寄与できる人材の育成を目指していますが、それを実現するには教員側の努力はもちろんのこと、学生自身の主動的な取り組みも不可欠です。国際社会の諸問題をどう見るのか、それらの問題の解決に向けて現在の自分はなにをすべきかを真剣に考えながら、学問に精進し、その上、国内外において実践的な活動に励む、それが国際総合学類生(「国際生」)の姿です。

筑波大学国際総合学類